戦後復興期にとてつもない速さで東京という街が形成された時以来、また東京は目まぐるしく変化している。 かつて築き上げられたものが寿命を迎え、 令和の今、ビルドアンドスクラップの嵐に包まれている。
その破壊と再生のエネルギーは中心部からヘリである湾岸部に向かって徐々に減衰していく。 湾岸産業道路、大井埠頭、羽田空港などがある京浜工業地帯沿いに連なるヘリの景色は、 かすかに残る平成東京の残像である。このエリアがどこか異様な雰囲気に包まれているのは時代の軸から切り離され、 異次元の世界に漂っているからだ。
ヘリの景色は、 これから迎える未来の東京と過去との境界線でもある。ここに来ると、 現在でも過去でも未来でもない時間に行くことができる。 都心にいて感じる曖昧さの核がヘリにある。
都心から円状に広がったエネルギーとヘリがぶつかり合う場所はパノラマが合う。 どこか、 世間の狭間に落ちた自分はヘリにシンパシーを感じるのだ。
飯沢耕太郎氏によるレビュー(artscape)